2007年イタリアの旅21「ヴァチカン」
ローマ最後のビジネスホテル風のホテルの朝食はフツーすぎたので妻はちょっと不満げであった。
そんな朝食をとってから、今日は今回の旅のもうひとつの目的、ヴァチカン美術館へ向かう。このヴァチカン美術館に学生時代訪れたとき、少し不思議な体験をし、人生が少しだけプラスに変わったのである。その場所をまた訪れたかった。 以前訪れたのは真冬であった。したがってそれほど並ばずして美術館に入場できたのだが、今回は噂に聞いていた通り入り口から壁伝いに伸び、コーナーを曲がって通りに面するまでの相当の行列であった。途中割り込みをめぐるバトルもあり、待っている間も退屈しないのであるが、結構待たされた。いざ開門すると、意外とあっさり入れるのではあるが。
かつて不思議な体験をした場所はチケットを買ってエスカレーターをあがってすぐの場所であったと思う。今回は別に何の奇跡もなかったが、現在の自分を形成する分岐点となった(少し大げさだが)その場所に再び訪れて、全身に電気が走るような(雷に打たれるような)不思議な衝撃が走った。同行する妻にはその感情は伝えず、一人で静かに余韻を感じていたのである。
あとはフツーに美術館を見学した。昔より観光客が多く、あちこちで渋滞を起こしている。そして奥の奥まで進み、「最後の審判」を見に行く。この絵は以前訪れたときは修復中で、レプリカのシートが上を覆っていて、本物を見ていなかったのだ。修復されたその絵は鮮やかな青色が印象的で、天井の創世記の絵と合わせ、圧倒的な迫力である。広間は見物客でかなりごった返していたが、しばし言葉を失って見入ってしまった。
さすがカトリックの総本山。ここには何かあるのである。
ヴァチカン美術館を出て、サンピエトロ寺院へ行く。
ここは肌を露出する服はいけないとか、聖地だけあっていろいろ規制がある。参拝者はそんな対策用の衣類を持ってきている人がほとんどだ。私が以前訪れた時は、なんだか荷物の持ち方を注意されてクロークに預けるように入り口で指導された記憶がある。
寺院も相当の行列であった。中も相当混んでいる。しかしここでは美術館のような(前述)奇跡的な体験とか衝撃的な体験はないのである。敬虔な信者ではないからだろうか。ただその建物の大きさと豪華さから、ローマカトリックの威力の大きさに圧倒されるばかりである。
ヴァチカン市国を出て、昼食へ向かう。近くで比較的上品なレストランをガイドブックで探したが、まだ時間が早く(11時台)、開いていないようである。あたりをぶらぶらしてオープンを待った。ヴァチカンの周りにはこぢんまりしたヴァチカン日本大使館を発見。日の丸が見えたのでわかったが、普通の家屋という感じのところだ。微妙にイタリア国内にあるような位置だが市国にはそんな土地はないのだろう。
レストランが開く時間になった。
だいたいの客は外のテラスで昼食をとっている。他にいた客も金持ちそうである。右隣はいかにもリッチな雰囲気の家族が子連れで昼食をとっていた。

このイタリア旅行ではじめて気づいたのだが、メロンに生ハムを巻く、というものは、今まで日本の気取った店が何か勘違いして出したメニューかと思っていたのだが、イタリアではこういったレストランで多くの客が頼む一般的なメニューだったのである。いままでの旅行はそういったメニューが出る店に入らなかったので(貧乏旅行だったので)、この歳になるまでまったく気づかなかった。
レストランでは、ややふっくらした中年の男性ウェイターが我々のテーブルの担当だったのだが、配膳中、「英語は話せますか?」と聞いてきた。もちろんイタリア語はさっぱりなので「少しなら」と答えると、「日本人ですよね?日本人ならターキーを知ってますよね?」と言う。
ターキーといえば七面鳥か水の江瀧子さんくらいしか知らない。知っていると言えば知っているが、知っているという範囲に入るのかわからずどぎまぎしていると、彼は注文用のメモ用紙に「TAKE」と書いて示した。「テイク?」と思ったが、彼は「ターキーはこの店によくくる私の友達だ。今イギリスでレースをしているけど」と言う。以上の情報を総合するとターキーとは武豊氏である。確か今海外のレースに騎乗しているはずであった。ウェイター氏と友達かどうか知らないが、競馬界ではヨーロッパでも武氏は名前が通っている人である。きっとこの店に何度も訪れているのだろう。確かに上品なレストランで味も良い。彼の様なセレブリティが来ても不思議ではない。
そういえば現地の人と旅行に必要な会話(宿泊、飲食、乗り物利用など)以外の世間話をするのは久しぶりである。酒も入ってすこしだけいい気分。注文の手違いか何かで左隣のアメリカ人ぽいカップルとアイコンタクトで笑いあう、というシチュエーションになったので思い切って声をかけてみた。世間話その2である。
聞くとカナダのトロントから来たカップルだと言う。トロントなら少し前にカナダ旅行で行ったばかりである。そんな話をしてトロントの印象を聞かれたのだが、私の英語の語彙では「スゴクイイトコ、マチキレイ、メシオイチイ、タワーノボッタ」ぐらいの、たどたどしい返答しかできない。だががんばってカップルの男性から次の質問を受けた。「カナダでは他にどこに行ったの?」その質問は答えられなければならない。なぜならそのカナダ旅行の主目的地はナイアガラとプリンスエドワード島だったのだから。
しかしここで、「度忘れ」によりこの「プリンスエドワード」という地名が出てこないのである。そこで、モンゴメリーのアンの・・・と苦し紛れにヒントを探ったら、先方がプリンスエドワードを当ててくれた。助かった。後は東京は行ったことあるだの、ローマ旅行は何日でどこへ行くなど、世間話としては上等なかなり当たり障りの無い会話をしているうちに食事も終わったので会計をして彼らとは別れた。
自分から話し掛けておいてここまでカタコトだと、向こうも当惑しただろうが、久しぶりの世間話シリーズは旅行した雰囲気が味わえてこちらは満足であった。妻は英語はさっぱりなので、私の片言ぶりも困惑した状況もわからなかったようだが、会話には加われず放置してしまったのは申しわけなかった。
ともかく、旅も後半でやっと旅らしくなってきたのである。しかしこのブログ、更新が遅く、昨年の夏の話題をまだグダグダと書いているのである。つづく。
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